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DoNotTrack「追跡を拒む」


DoNotTrackというキーワード、ご存じでしょうか?

追跡しないでね♪

という意味です。
さてさて、「何を」追跡しないでくださいと言っているんでしょうか。

まずはこんな話から。

スーパーで、少し高めの豆腐を買いました。
帰宅後、キッチンで晩ご飯の支度をし始めたら、玄関のチャイムが「ぴんぽーん」。
「もう帰宅?」と思いきや、向かいの醤油屋(?)さん登場。
「奥さん、豆腐に使う、いい醤油が入りましたよ!いかがですか?」

追跡者の追跡

一般的な解説として、とても良い講演があります。
ゲリー・コバックス氏の「追跡者の追跡」という動画をご紹介します(6分40秒)。

http://www.ted.com/talks/gary_kovacs_tracking_the_trackers.html
日本語字幕がついてきますので、音声を消してもある程度分かるかと思います。

「我々は、ストーカーにあっているのと同じだ」

という象徴的な言葉が出てくる通り、ブラウザでアクセスすることによって、我々は色々な情報を「監視者に晒して」います。
「監視者」とは聞こえがいいですが、同意もなし監視している場合もありますので、「のぞき見されてる」と言っても申し分ないでしょう。
また、「訪れたサイト」に「監視」されるならまだ分かりますが、まったく覚えのサイトからも監視がはじまります。

監視者は、その得た情報を元に、我々にアプローチをし始めます。
「そんな状況になることを知っている」のであれば、まだ分かりますが、「知らず知らずのうちに」という状況が多いのではないでしょうか。

今回紹介する、DoNotTrackは、「知らず知らずのうちに」を回避するためのものです。

情報収集・分析・施策検討

少しお話を変えてみます。
どの業界でもそうですが、情報戦略は企業にとってとても大事なことと思います。
色々な情報を収集し、傾向を読み取り、その情報を持って次の施策を検討する。
そんなPDCA的な経営・営業活動がとても大事なわけです。

さてさて。ここでこんな話を。

真夏の夕方17:50ごろ、豆腐が売れる。

誰が購入?
他に売れてるものある?
売れてない日ってどんな日?
シチュエーション変えると、豆腐みたいな傾向ない?

スーパーさんで考えそうなお話です。
ニヤニヤする情報や傾向が見えてきそうです。

どんなことでもそうですが、このように「真夏の就業時刻後に豆腐が売れる」という「情報を集められて」やっと検討が始まるわけです。そして、分析検討し、施策が生まれると。
これによって、売上が上がるかもしれませんし、失敗するやもしれません。
ある種「賭」だと思うのですが、それが商売を楽しくさせているものではとも思います。

ただ、その情報の精度が「高」になれば、「賭」というリスクも減りますよね。
「次の施策」の精度を上げることが出来るからです。

商売をする方にとってすれば、あたりまえなことかもしれません。
「確度が高い情報」(質のいい情報)は、のどから手が出るぐらい欲しいです。
そんな需要が沢山あれば、それを「売り」にする企業が成長しはじめます。至極当然な成り行きです。

情報を売る企業は、

「どう情報を集めようか」
「どう傾向を分析しようか」

を色々なアプローチを考え出します。

そして今、同意もなしにユーザを監視し、情報をのぞき見することが「普通」になってしまっている状況が生まれてしました。
規制の緩い「インターネット」ならではの流れです。
冒頭で紹介した動画でも紹介されていますが、この産業の売上は390億ドル(動画は2012/02のものです)にまでなっているとのこと。

追跡しちゃいやです

冒頭でお話した通り、私たちの行動は、監視者に晒されています。
その「晒される」という行為も、どうかと思うのですが、その情報を用いて知らない間にプロファイリングされ、アプローチされる場合があるというんですから、怖いもんです。

広告会社などが、あなたのサイトの閲覧や商品クリックなどをもとに算出した傾向を、次の商品紹介時に使う

ショッピングサイトなどで、何かを買おうかなと悩んだ後、いやにその商品を紹介するサイトが増えたりしませんか?
お友達のブログや、他のサイトへ行っても、その商品を紹介してくるなど。
それらは、「あなたの傾向」を掴んで、「商品を売り込もう」としている状態です。

その理由を理解した上で、ブラウジングを楽しんでいる方であれば、全く「脅威」は感じませんが、知らない方にとってすれば、驚きの連続です。
「映画マイノリティーリポートにも登場してきたやつですか!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

この「あなたの傾向」というのは、「かなり高度なプライバシーのもの」です。
そんな情報を、「誰だか分からない」方々が、「同意もなしに」掴んでいたりします。
そのプライバシーをもてあそぶかのように、「商品を押してくる」というのは、とても脅威なこと。
商品の売れ行きなど、全体的な傾向を色々なお客様へ提供するなどの話は分かりますが、上記のお話は、少し「懐に入りすぎている感」があります。

入って欲しくないところには、入ってほしくないものですよね。

スーパーの話

先ほどの豆腐のお話に戻ります。
冒頭に出した少し極端なお話です。

「スーパー」で「豆腐」を購入し自宅に戻る。
玄関にお客さん現れ、「豆腐醤油を買ってくれ」とアプローチされる

「スーパーで豆腐を買ったことが、主要な方々へ連絡される」
ことを知っていれば、「まだ分かります」よね。
でも、その「状況を知らない人」からすると、「ストーカー」と思うぐらい怖い話なわけです。

「監視者」たちの大半は、同意もなしに情報を収集し、利用しています。
つまり、「我々は、状況を理解するすべも、どう使われているかも分からない」状態。

それらを規制する動きが、今回紹介しています、W3CのDNT規格(DoNotTrackの頭文字を使ってます)になっています。

まずはブラウザから

皆様がホームページなどを閲覧する場合、ブラウザを使いますよね。
そして、監視者はそこから情報を集めます。

ブラウザから出て行く情報を監視者が集めるのであれば、その情報に「監視を拒否する」通知を入れられないかと考えました。
この機能を、DoNotTrack拒否機能といいます。
現在、各種の有名なブラウザが実装し始めており、主なブラウザは、ほぼこの機能が実装されているところまで来ました。

WEBサイトを閲覧する際に、自動で「監視者」に「監視はご遠慮ください」と言ってくれる機能です。
(HTTPヘッダにDNTタグを入れ、拒否を宣言するようです)
むろん、「監視してくれて結構です」という方へは、「遠慮下さい」は通知しない対応も出来ます。
(実装で、どう線引きしているのかは分かりませんが、閲覧しているドメイン以外へのリクエストを対象にしているか、リストからチョイスして決めているかのどちらかでしょうか)

意思表明が始まったばかり

ただ、現状のDNT拒否機能は、まだまだなところがあります。
「拒否します」と「監視者」へ言うに留まっているところです。言ったところで、先方が「何知らぬ顔で監視を続ける」なんてことも起きうる状況。
玄関に「セールスお断り」の張り紙があっても、「飛び込み営業」くる場合もありますよね。
そのようなことです。

ただ、「意志の表明」が出来ることは、とてもすばらしいことです。今まで、その表明すら出来ていなかったのですから。
そして、今後は「その意志」を、どこまでホームページ提供側(Webサービス側)が意識してくれるかにかかってます。
規格がどこまで浸透し、どこまで運用されるのか。
モラルハザード状態なものが、どこまで回復するのか。
広告掲載企業のあり方が、どこまで変わっていくのか。

Webサービスを作る側の人間としても、日々勉強して行かないといけないですね。
今日は少し長くなりましたが、読んでくれた皆様、有り難うございました!
ではでは今日はこのへんで!

参考



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